僕がインドに強く惹かれるようになったのは、1冊の本がきっかけだった。
僕は数年前から、世界中を旅したいと思っていた。
で、世界を旅する前に、世界の歴史について、ある程度知っておきたいな、と思い、1冊の本を買った。
『137億年の物語』という本だ。
この本の著者は、イギリス人だ。
僕たちは皆、学生時代に世界史を勉強して来た。
が、学校教育で習う世界史は、かなり偏った視点で描かれている。
歴史のことに関しては、もう過ぎ去ってしまったことなので、どれが真実なのかは、もはや確かめようがない。
が、より真実に近づこうと努力することは出来る。
より真実に近づくためには、色んな視点からの歴史を学んでみる、というのが一つの手だ。
特に、外国人の視点で書かれた歴史書は、日本人の視点とは全く違った視点から描かれていて、中々面白い。
この、『137億年の物語』という本も、読んでいて非常に面白かった。
僕が今まで学んで来た歴史の中には、全く出て来なかった、意外な歴史がたくさん描かれていたからだ。
この本を読んでいた時はちょうど、月に休みがたった1日で、さらに1日14時間労働とかしていた時期だったので、毎晩、本を開いて30分後にはもう夢の中に入っていた。
そんな過酷な時期だったにもかかわらず、面白くて一気に読んでしまったのを覚えている。
ちなみにこの本は、タイトルの通り、137億年前から現在までの歴史が描かれている。
なので、当然ページ数はかなり多い。
確か、500ページくらいあった気がする。
そんな分厚い本で、さらに内容も濃いので、読むのは中々大変だった。
にも拘らず、あの忙しい時期に3回くらい続けて読んだので、やはりかなり面白かったのだろう。
そんな、中身も濃く、ページ数も多い本の中、僕はある1ページがやたらと気になった。
他にも面白い所はたくさんあったにも拘らず、そのページだけが、なんだかやけに引っかかったのだ。
それは、マハトマ•ガンディーについて書かれたページだった。
マハトマ•ガンディーと言えば、日本人でも皆知っている、非暴力による独立運動を唱えた、インド独立の父だ。
理性的、開明的、文明的なイギリス人が、非理性的、暴力的、無知なインド人を支配するのは当然である。
こうした論理で支配を正当化しながら、理性的に振る舞うイギリス人に対抗するためには、イギリス人の方がより野蛮で、暴力的であることを示す必要がある。
そこでガンディーは、非暴力を唱え、独立運動を行った。
何度も投獄されたりしながらも、非暴力による独立を訴え続けたガンディー。
常人では考えられない精神力だ。
そんな強靭な精神力を持ったガンディーの、心の支えとなった物語があるという。
僕が気になったのは、まさにそこだった。
ガンディーがくじけそうになったとき、何度もガンディーに力を与えた物語。
僕らのような、一般人がくじけそうになったときではない。
あのガンディーがくじけそうになったときに、力を与えた物語だ。
僕らのような一般人は、ちょっとしたことで、
「もう生きて行くのが嫌になった。」
とか言ってくじけてしまうが、ガンディーであれば、その100倍くらい辛いことがないと、くじけそうにならないだろう。
ガンディーがくじけそうになるときと言えば、もう地獄のように辛い出来事があったときだけだ。
そんな、地獄のように辛い出来事があり、くじけそうになったガンディーを、立ち直らせる程の力を持った物語。
『そんなスゴイ物語があるのか、、?!
それはぜひとも読んでみたい!!』
その物語とは、ヒンドゥー教の重要な聖典の一つである『バガヴァッド•ギーター』だ。
僕はすぐに、『バガヴァッド•ギーター』という物語を探し出し、読んでみた。
するとそこには、とんでもない内容が書かれていたのだ。
ここで、『バガヴァッド•ギーター』のストーリーを簡単に説明しよう。
この物語は、主人公である王子アルジュナと、その御者に扮した神クリシュナの対話形式になっている。
ある時、王子アルジュナは、自分の親族や、自分を育ててくれた師匠達と、戦争をしなければならなくなってしまった。
戦いを前にして、王子アルジュナは神クリシュナに弱音を吐く。
「ああ、私はどうすれば。
勝つべきか、負けるべきか。
彼らが死ねば、私も生き甲斐をなくす。
一体どうすればいいのだ?」
と。
それに対して、神クリシュナが答える、という形で物語は進んで行くのだが。
ここで思い出してほしい。
この物語を読んで、力を得たガンディーは、非暴力による独立運動を行った。
ということは当然、クリシュナは非暴力による解決手段を、アルジュナに教えるのだろう、と僕は思った。
が、そんな僕の予想に反するような教えを、神クリシュナは説いた。
「全ての生物は永遠不滅であり、破壊され得るのは肉体だけである。
故にアルジュナよ、勇ましく戦え!」
『た、戦うんか~い!?』
親族同士の戦争を容認するかのような、神クリシュナの教え。
一体これは、どういうストーリーなのだろうか、、、?
僕は、『バガヴァッド•ギーター』の持つ不思議な世界観に惹き込まれていった。
続く、、、