旅が好きで、アジア中を色々旅して回っている僕だが、インドのバンガロールに住んで2ヶ月半、バンガロールを全く歩き回っていない、ということに気付き、バンガロールの街を散策し始めた。
さて、では前回の続き。
僕は、MGロードの近くのバス停でバスを降りた。
が、いつもリキシャで降ろしてもらってる所とは、ちょっと離れた所で降りたみたいだ。
僕は、いつもよく行ってる、見慣れた風景がある所まで歩いて行くことにした。
が、若干道が分からなくなってしまった。
すると、リキシャのドライバーが近寄って来た。
「どこに行くんだ?
乗ってけよ!」
「いや、近くだから歩いて行くよ。」
「いいって、乗ってけよ。
20ルピー(約35円)で乗っけてってやるよ。」
「いや、歩いて行くからいいよ。」
「分かった。
10ルピーで乗っけてってやるから。」
「いや、いいって。」
「ほんとに10ルピーだけでいいよ。
それに、行く途中色々案内しながら行ってやるからさ。」
こんな問答があと5~6回続けられた後、
「まあいいや、じゃあ10ルピーなら乗っけてってよ。」
ってことで、乗っけてってもらうことにした。
僕はリキシャに乗り込み、リキシャは走り出した。
ドライバーのおっちゃんが、
「ほら、ここがインドの軍隊の施設だ。」
と案内してくれた。
『へ~、こんな所にそんなのあったんだ。』
案外、近くなのに知らなかったな。
おっちゃんのナイス案内。
『この案内付きで10ルピーならまあいいか。』
と、思いながら走ること10分。
『あれ?
イメージ的に1分も走れば着くと思ってたんだが、、、』
と思ってたら、リキシャは変な店の駐車場に停車した。
ドライバーのおっさんは、おもむろに名刺を取り出し、
「ここは俺の兄弟の店だ。」
と言い始めた。
どうやら伝統工芸品のショップらしい。
「買わなくてもいいんだ。
ただ5分くらい見て回るだけでいいから。」
「いや、いいよ。
俺はMGロードに行きたいんだから、MGロードに連れてってくれよ。」
「いや、ほんとに見て回るだけでいいんだ。」
「いやだ。
見る必要ない。
早くMGロードへ行って!」
「いや、ほんとに5分くらい店内を回るだけでいい。
そしたらクーポンをもらえるんだ。
クーポンをもらえたら、子供達に本を買ってあげられる。」
こんなやり取りを5~6回続けた後、、、
「まあいいや、ほんとに見るだけで買わないからな。」
ってことで、店内に入ってみることにした。
正直、5分くらい見て回ったら、クーポンをゲット出来る、というその仕組みが気になった。
一体どういうシステムなんだ、、?
僕が店内に入ると、客は僕一人で、店員が4人くらいいた。
そのうちの一人が、僕に店内の商品を色々説明して来た。
店内の商品は、木彫りの工芸品や、カシミヤ製品、シルク製品、絨毯など。
僕は全く興味がなかったが、一応、
「これいくら?これいくら?」
と、多少なりとも興味がある振りをした。
ちょっと店員がノって来て、シルクやカシミヤのスカーフを何枚も並べて、
「さあ、どれを何枚買うんだ?」
という話をして来た辺りで、
「オッケー、ありがとう。
バイバイ。」
と言って、そそくさと店を出た。
時間にして5分程度。
あれで、ドライバーのおっさんはクーポンをゲット出来たのか、、?
よく分からなかったが、とりあえずその後、MGロードに乗せてってくれて、本当に10ルピーだけ払って別れた。
ちなみに、あの店に行く前までは、あんなに愛想良く色々案内してくれていたのに、その店に行ったらもう任務完了って感じなのか、その後は一言も喋って来なかった。
MGロードに着いた僕は、ブラブラとウィンドウショッピングをして、スタバに入った。
スタバの抹茶ラテ、ホイップクリーム付きを頼んだら、150ルピーくらいだった。
30ルピーくらいでお腹いっぱい食べれる店がある中で、ドリンク1杯で150ルピーだから、やっぱ高いよな~。
店内はやはり、金持ちそうなインド人か、欧米人、中国、韓国、日本人っぽい人達だけだった。
スタバを出た後、ちょっと高そうなレストランで、ローストチキンを食べた。
そこもやはり、金持ちそうなインド人ばかり。
まあ、高そうなレストランって言っても、400円~700円くらいで食べられるんだから、日本人の感覚からすると安いよな~。
さて、そろそろ帰ろうかな、と思い時計を見ると、17時半くらいだった。
帰宅ラッシュの時間帯だ。
その辺のリキシャに声を掛けると、250ルピーだと言って来た。
『おいおい、普通にメーターで走ったら70ルピーくらいの所だぞ。。』
この時間帯は、帰宅ラッシュでお客さんはたくさんいるので、結構ふっかけてくる。
僕は、
『適当に歩いてたらウチの近くに行く、見慣れた番号のバスが見つかるんじゃないか?』
と思い、適当にその辺を歩いてみることにした。
いつも、MGロードに行くときは、リキシャに乗って行っていたので、その周辺を歩くのは初めてだった。
10分ほど歩いてると、ちょっとにぎやかな通りが出て来た。
その通りは、やたらとムスリムの人達が多い通りだった。
ちょっと、今まで見て来たインドの雰囲気とは違った、新鮮な雰囲気を感じたので、僕はその通りの奥にずんずんと入って行った。
お祭りでもやってるかのような、非常に活気のある通りだった。
『日本でこんなに活気のある通りって、ほとんどないよな~。
アメ横だって、こんなに活気無いぞ。』
僕は、バンガロールにこんなに活気のある通りがあったことに、驚きながら、楽しくなってどんどん奥に進んで行った。
その周辺には、イスラム教のモスクがあり、ヒンドゥー教の寺院があり、キリスト教の教会があり、と色んな宗教がごった返していた。
楽しくて見て回っていたら、辺りはすっかり暗くなってしまっていた。
で、気づいたら、もと来た道が分からなくなっていた。
さすがの方向音痴である。
僕は、『千と千尋の神隠し』の世界に迷い込んだような気分になっていた。
色々それっぽい道を戻ってみるが、歩けば歩くほど、奥に迷い込んで行ってるような感じだった。
が、ここはインド。
もしここが日本であればなんとかして、もと来た道を戻って、なんとかしてバスか電車で帰ろうと考えるが、インドであればその辺のリキシャを捕まえれば済む。
最悪、多少ふっかけられた所で、300円程度だからそんなに痛くない。
僕は歩き疲れたので、その辺のリキシャを停めた。
交渉した所、メーターで走ってくれることになった。
(リキシャに乗るときは、目的地までいくらで走るか、もしくは走った距離に応じてメーターで計算するかを決める。
大体目的地までいくら、と言ってくる場合は、通常の1.5~2倍くらいの値段を言ってくるので、メーターの方が比較的安全だ。)
普通、日が暮れると、夜間料金とか言って、1.5~2倍くらいの料金でしか行かない、と言ってくるので、僕はそのくらいの覚悟はしておいた。
が、普通にメーターで言ってくれるなんて、ラッキーだったな。
そう思っていたら、僕の乗っていたリキシャは、変な所で停まった。
そして、
「俺の兄弟がやってる店があるんだが、、、。」
と言って、名刺を渡して来た。
「いや、そんな店行かないから早く家に連れて帰って。」
「いや、買わなくていいんだ。
店内を5分くらい見て回るだけでいいんだ。」
「いや、行きたくないよ。
早く帰って。」
「いや、ほんとに見るだけでいいんだ。
5分くらい店内を見て回ればクーポンをもらえるんだ。
そしたらガソリンを入れられる。
もしその店に行ってくれたら、君の家まで20ルピーで行ってやるよ。」
「いや、いいからまっすぐ帰ってくれ。」
「いや、頼むから。」
その後、こういうやり取りが5回ほど続いた後、
「分かった、行くよ。
その代わり、絶対に20ルピーで家まで送ってくれよ。」
ってことで、結局またその店に行ってみることにした。
僕はまた、買う気もないのに、店内をウロウロ見て回り、ちょっと値段を尋ねてみたりしながら、5分ほどして店を出た。
そして、リキシャに乗り込んだ。
「はい、これでいいでしょ?
さあ、家まで送って。」
と僕は言った。
すると、
「さっきのは短過ぎて、クーポンをもらえなかった。
もう一軒別の店に行かないと。」
と言って、また別の店に連れて行かれた。
しかも着いたのは、昼間来たあの店だ。
「おい、ここは昼間来たぞ。」
と言うと、
「そうか、それはまずいな。
もう一軒別の店に行こう。」
と言って、また別の店へ。
こういう店が一体何軒あるんだ?
ってか、確実に兄弟の店じゃないだろ、、?
一体何人兄弟だよ、、?苦笑
僕はちょっとあきれながらもこの、とりあえず冷やかしでもいいから客を連れて来たらクーポンをもらえる、というシステムが気になっていた。
また新しい店に連れて来られて、僕は店内に入った。
その店はもう店じまいする間際だったが、僕が入ると、店員がやって来て案内を始めた。
「もう店じまいする直前だったから、あなたはラッキーだ。
4割引で売ってあげるよ。」
店員はそう言って来たが、4割引された後の値段でも、今までの店の中で一番高かった。
僕は、買う気は全くなかったが、また色んな商品の値段を聞いた。
絨毯の値段を聞くと、1万ルピー(約1万7千円)くらいだと言われた。
『う~ん、これじゃよく分からないな~。』
僕は、
「カシミヤとシルクのスカーフはないのか?」
と尋ねた。
すると、カシミヤとシルクのスカーフを何枚も並べてくれた。
『うん、これだったら、今日何となく相場を覚えたので分かるぞ。』
僕は、色々比較検討してる振りをしてるが、もちろん買う気は毛頭ない。
その前に、財布には300ルピーくらいしか入ってないので、そもそも一番安いのも買えないくらいなんだけど。。
店員は、
「さあ、どれを何枚欲しいんだ?」
と言って来た。
出た、よくある手法だ。
”はい、いいえ”で答えられる質問をしたら、”いいえ”と言われてしまうので、”はい、いいえ”では答えられない質問で攻めてくる。
世界どこに行っても同じだな。
そんなのは、学生時代に日本で引っかかって痛い目見た経験あるんで、もう引っかかんないよ。
僕が答えないと分かると、
「君はこの中でどれが好きなんだ?」
と言って来た。
”欲しい、欲しくない”ではなく、”どれが好きか”という質問をして来た。
『欲しくはないけど、好きなのはこれだな。』
とか安易に選んでしまうと、そこから引き返せなくなってくパターンだな。
『そんな手には乗らないよ。
うん、これ以上ここにいると、この手の攻撃をどんどん仕掛けてくるに違いない。
そろそろ潮時だ。』
「オッケー。
今日はお金を持って来てないから、また来るよ。」
そう言った途端、さっきまでニコニコしていた店員の顔が、急に変わった。
「金持ってないんなら、なんで店に入って来たんだ?」
「このドライバーが無理矢理連れて来たからに決まってんじゃねーか。」
僕はさっと店を出て、リキシャに乗り込んだ。
「これでオッケーだろ?」
とリキシャのドライバーに尋ねると、
「ああ。」
と言った。
さっきまで結構愛想良かったのに、あの店に連れて行ったら任務完了って感じなのか、急にいい加減な態度になっていた。
そしてリキシャは、僕を拾った辺りの所で、急にエンストした。
ドライバーは、おかしいな~、という感じで、何度もエンジンをかけようとしている。
が、何度やってもかからない。
「すまん、エンジンがかからなくなった。」
リキシャのドライバーはそう言って、他のリキシャのドライバーを呼んだ。
「おい、俺のリキシャは動かなくなったから、代わりにこいつに乗せてってもらいな。」
そう言って、別のリキシャを紹介して来た。
「おいちょっと待て、あの店に行ったら20ルピーで家まで送るって約束だぞ。」
「その予定だったけど、俺のリキシャはエンジンがかからなくなったんだ。
ほら、こいつに送ってもらえ。」
すると、新しいリキシャのドライバーは言った。
「俺が150ルピーで送ってやるよ。」
「はあ?!
ふざけんなよ、お前20ルピーで送るって約束したんだから、別のドライバー紹介せずにお前が送れよ!」
「そうは言っても、俺のリキシャは動かなくなったんだ。」
「もう一回動くかどうか試してみろよ。」
そう言って、元のリキシャの所に戻して、エンジンをかけ直させた。
が、やはり動かない。
「ほら、無理だ。
あいつに送ってもらえ。
ちなみに、お前はいくらまでなら出せるんだ?」
「20って約束したんだから、20までしか出せね~よ。」
「20って、あんなに距離あるんだから20じゃ無理に決まってんだろ?
そんなに安く行きたいんだったら、あっちにバスがあるから、バスで行けよ。
バスだったら20で行けるよ。」
『こいつ、、、
あの店に連れて行きたかっただけで、最初っから送る気なかったな。。』
僕は、このドライバーに怒りが沸き上がって来た。
「お前詐欺師なのか?」
僕がそのドライバーに言うと、そのドライバーは、
『ヘッ。』
ってな感じの顔をして、どっかに立ち去って行った。
『あのくそドライバーめ~。』
と思いながら、僕はそのくそドライバーが言ったバス停の方に向かって歩いて行った、、、
と見せかけて、20mくらい進んだ所でまたあのリキシャの所に戻ると、あのくそドライバーはリキシャのエンジンをかけてブ~ンと逃げて行った。
分かってたけど、やっぱり演技だったか。。
僕はさらに怒りが沸き上がって来た。
が、もうあんな奴に構っててもしょうがない。
僕はバス停の方に向かって歩いて行った。
とは言え、そのバス停は、あのドライバーが適当に言っただけで、僕の家に帰るバスがあるかどうかなんて分からない、、、
と思ってたら、すぐに見つかった。。
なんだよ、最初っからこれで帰ればよかった。。
結局僕は無事に、20ルピーでバスで帰り着きました、とさ。
いや~、しかし無駄な時間を過ごしたよな~。
いや、こうやって後で話のネタになるから、ある意味貴重な時間を過ごしたと言った方がいいか。
まあ結局、お金は全くとられてないしな。
今回だけで、嘘つきの色んなサンプルをみれたし。
詐欺予防のワクチンを無料で打ってもらったと考えれば、得したと考えるべきか。
まあこれがインドの日常です。
それも、比較的安全だと言われてる南インドの。。
北インドは、こんなもんじゃないという噂を聞くので、インドに行く方は、くれぐれも覚悟の上お越し下さい。