タイ、カンボジア、ラオス、3カ国を1ヶ月間旅して、南インドのバンガロールという街にやって来た。
バンガロールに住み始めてもうすぐ2ヶ月半。

僕は旅が好きで、今アジアを色々と旅している途中なのだが、よく気づいたら、自分が今住んでいるバンガロールという街を全然旅していなかった。
旅が好きでも、案外住んじゃうと、その周辺を旅しなくなってしまうものだ。

このままでは、バンガロールについて何も知らないまま、バンガロールを離れることになってしまう。
バンガロールに滞在するのは、あと1ヶ月。

ラスト1ヶ月の間に、もう少しバンガロールの街を観て周ろう。
と思い立ち、適当にバスに乗って出掛けてみることにした。

今回は、本当に思いつきで外に出たので、行くあてなどない。
とりあえず、いつも乗るバスの、反対方向へ行くバスに乗ってみよう、と思いバスに乗り込んだ。

僕が乗り込んだバスは、僕が住んでるところから、すぐ近くが終着点だったので、15分くらい走ったところで降ろされた。
歩いて帰ろうと思えば、帰れる程度の距離なのだが、こっち方面は全く来たことがない所だったので、見る景色が新鮮だった。

とは言え、本当になんにもない所だったので、とりあえず昼飯だけ食べて、またどこか違う所に行くことにした。
ただ、地図も何も持っていない状態だったので、これ以上適当な所に行くと、迷ってえらい所に行き着いてしまうかもしれない。

僕は極度の方向音痴なので、その辺はちょっと心配だった。

韓国に住んで半年くらいの頃、家から半径500m圏内の近所で、30分くらい、道が分からずさまよい続けたこともある。
大学時代に、大学の近所で、1時間くらい迷子になったこともある。
あの時は冬で、しかもバイクで迷子になったので、危うく凍死しかける所だった。。

そんな記憶が蘇ってくる。

『やはり、冒険するんだったら、ちゃんとグーグルマップとかも使える状態の時に、もう一度やろう。』
ということで、今回はこれ以上訳の分からない冒険はせずに、自分が行ったことのある所に行くことにした。

向かうは、MGロード。
MGロードのMGとは、あのマハトマガンディーのMGだ。
インドには、至る所にMGロードがある。

僕が住んでる所の近くにあるMGロードは、その界隈の繁華街になっている。
飲みに行くとか、買い物に行くとかいうときは、とりあえずMGロードに行こう、となるような所だ。

僕も今まで、5回以上行ったことがある。
だが、これまでは全部夜だったので、今回は初めて、昼のMGロードに行ってみようと思った。

僕は、昼ご飯を食べた店から、てくてく歩いて、近くのバスの停留所へ行った。
バスの停留所には10人弱、インド人達が待っていた。

僕は、その中の若い兄ちゃんに声を掛けた。
「MGロードに行くバスって、何番のバスか分かる?」

するとその兄ちゃんは、
「俺も同じ方向に行くから、来たら教えてやるよ。」
と言った。

しばらく待っていると、バスがやって来た。
僕はその兄ちゃんと一緒に、バスに乗り込んだ。

僕は、その兄ちゃんの隣の席に座った。
その兄ちゃんは、よく見てみると、ハリウッド俳優のジョントラボルタのような顔をしていた。
なので、ここでは勝手にトラボルタと呼ばせてもらうことにしよう。

トラボルタは、僕に色々と質問をして来た。

「何歳だ?
どこに住んでるんだ?
インドで何してるんだ?
仕事は?
親は何やってるんだ?」

僕は、つたない英語で答えた。
そして、同じように彼にも質問をした。

すると彼は答えた。

「俺は21歳の大学生だ。
将来は○○になろうと思ってる。(←なんだったか忘れた)

俺の親父はドライバーだ。
だが、親父は仕事選びを間違えた。

ドライバーの収入はあまりよくない。
だから、親父は俺に期待して大学に行かせた。

でも、大学の授業料は高い、、、」

『うんうん、、そんなことまで聞いてないんだけどね、、。』

「助けてくれ。」

「え?!」
僕は、トラボルタの英語がよく分からずに、何度か聞き返したりしてたが、今回は英語は理解出来たが、話の流れが理解出来なかった。

「授業料を払わなければならないんだが、金が足りない。
助けてくれ。」

『ちょっと待てよ、、。
バスの案内をしてくれたことは感謝してるが、初対面の奴の授業料なんて払えないぞ。』
僕ははっきりと言うことにした。

「払えないよ。」

「頼む!
千ルピー(約1700円)でもいい。」

「無理。」

「百ルピー(約170円)でもいい。」

百ルピーくらいだったら上げてもよかったはよかったのだが、どうせこいつ無駄使いするだけだろう、と思ったので、断固拒否することにした。
それに、こういう強引な奴は、どうもあまり好感が持てない。

とりあえず、バスを教えてくれたってことで、バス代の20ルピーだけは代わりに払ってあげて、僕はバスを降りた。
トラボルタは、最後まで僕に百ルピーをせがみ続けた。

まあ、初対面の人に、あれだけ厚かましくせがめるんだから、心配しなくても、彼は上手いことやっていけるだろう。

ちなみに、こんな体験は初めてではない。
以前、サイババの生まれた村プッタパルティーを旅した後の帰りのバスでも、中々厚かましいインド人に出会った。

彼の場合、バスの中では、全然厚かましくなく、好感の持てる男だった。
バスを降りて、別れ間際に彼が、僕の連絡先を教えてほしい、と言って来たので、メールアドレスを教えた。

すると、翌日すぐに彼からメールが来た。
その内容は、
「僕は外国で教師をやりたいと思っている。
行きたい国は、○○と○○と○○と日本だ。

だが、ビザの問題がある。
そこで、インドに永住したい外国人の女性を紹介してくれないか?

僕はその女性の国で教師になれる。
彼女はインドに住むことが出来る。

な?お互い様だろ?」

『いやいやいや、そんな初対面の、どこの馬の骨か分からんような男に、結婚相手なんか紹介出来ないだろ、、。』
と思ってたら、ご丁寧にも職務経歴書を添付して送って来た。
しかも、4ページくらい、結構ぎっしりと書いて。

教師歴もあって、今は政府関係のしっかりした仕事に就いているってアピールだったが、まあそれでも結婚相手は紹介出来ないよね。
結婚詐欺師かも知んないし。

まあその前に、そんな女性の知り合いいないしさ。。

と、こんな風にインドでは、初対面の人に対しても、ガンガン厚かましいことを要求してくる。
一人一人に対して、親身になって対応していたら、生活出来なくなってしまうので、適当な対応をしておかなければならない。

さて、話は戻って、MGロードの近くのバス停で降りた。
という所で、ちょっと話が長くなりそうなので、この後は次回に持ち越しにしよう。