海外長期滞在者が直面する恐ろしい問題、それは『伸びてきた髪をどうするか問題』だ。
僕は今回、インドでこの問題に直面してしまった。

僕はあまり髪を切るのが好きではないので、散髪は3ヶ月に1回程度しかしない。
さすがに3ヶ月を超えると、いい加減暑苦しくなってくるので、そしたら渋々髪を切りにいく。

前回髪を切ったのが、日本を経つ前の3月末だ。
6月半ばくらいから、
『そろそろ切らないとまずいな~』
と思っていたのだが、中々その一歩が踏み出せなかった。

だって考えてみて?インドだよ?
インドで髪を切るってことが、どれだけ恐ろしいことか、、、

しかし、そんなことも行ってられないので、そろそろ覚悟を決めていこう。。
と思い続けて、2週間が経過した。

が、中々決心がつかない。
一応、散髪屋の前までは、何度も行った。(まあ毎日行くレストランの通り道だからだけど)

でも、なんか入る気になれない。
店の看板には、ベッカムとかブラピとか、おしゃれな髪型をした外人さん達の写真が、ど~んと載っている。

が、そんなおしゃれな髪型したインド人なんて、見たことない。
切られてるお客さん達の髪型見ても、普通のインド人カットばかり。

インド人の髪型が、みんなヘンテコな髪型なのかというと、そんなこともない。
というか、彼らは彼らなりに、あれで似合ってるからそれでいい。

だが、あの髪型を自分にされるとなると、
『それはちょっと、、、。』
と思ってしまう。

そんなこんなで、中々一歩が踏み出せなかった。
が、さすがに暑苦しくてかなわなくなってきた。

『もう耐えられない、今日こそは切りにいこう。
どうせ失敗しても、帽子かぶって過ごせばいいだけだ。

”切るは一時の恥、切ったは一生のネタ”だ!』

そう決心をして、ついにインドの散髪屋に行った。

店内に入ると、従業員が2人いた。(彼らに対して、美容師さんという言葉を使うには、どうしても抵抗があるので、従業員と呼ばせてもらう)
2人のお客さんがカットされていて、もう1人順番待ちのお客さんがいた。
僕も、順番待ちの席に座った。

僕はすぐに、従業員の髪型をチェックした。
奥にいた一人は、切れ込みの入ったツーブロックで、まあインドなりにはわりかしおしゃれな感じだった。

で、もう1人を見てみると、、、

いやこれ、髪型がどうのこうのとか言う前に、どうみても10代でしょ、、?

見た感じ17歳くらいの少年。
お兄ちゃんがカットしてるの見て覚えました的な、、。
髪型も至って普通の少年だし。。

とりあえず僕は、奥にいるツーブロックに切ってもらえることを祈った。
が、先にツーブロックの兄ちゃんの方が、前のお客さんを切り終えた。

ガ~~ン、、、
ってことは、順番待ちのもう1人があっちいって、僕は少年の方か、、、

と思ってたら、そのお客さんは、ひげ剃りだけだったので、すぐに終り、僕もツーブロックの兄ちゃんに切ってもらえることになった。
僕は、その辺にあったヘアカタログの中から、そこそこ大丈夫そうな髪型を選び、その写真をツーブロックの兄ちゃんに見せた。

インド人の髪型は、大抵襟足をバリカンで刈り上げられて、一直線に線を引かれたような感じになっている。
僕はそうならないように、
『こんな感じ!』
と、ヘアカタログのモデルの襟足の部分を指差しながら、強調した。

予想していた通り、ハサミは縦に入れられることなく、横にザクザクと切られはしたものの、バリカンで一気に刈り上げようとしなかっただけ、まだ好感が持てた。

(以前、日本で千円カットに行った時、前のお客さん達全員、見事にバリカンで刈り上げられていたので、
「バリカンで刈り上げるのはなしでお願いします。」
と予め釘を刺した所、
「刈り上げない程度にバリカン使いま~す。」
と言われ、ソフト刈り上げにされた思い出があったので。)

また、何度もヘアカタログの写真を確認しながら、カットの仕方を考えてる所も、好感が持てた。
(あんまり再現はされてなかったけど)

30分弱くらいで、カットは終った。
インドの散髪屋では、特に頼まない限りシャンプーとかはないらしい。
(今考えたら、シャンプー台自体なかったような、、)

切った髪の毛が、ベタベタと顔中に引っ付いたままの状態で、
「はい終わり。」
となる。

完成した髪型を見てみると、、、
まあ50点だな。

合格点にはほど遠いものの、30点代の完成度を予想していたので、そこまで落胆することはなかった。
『は~、よかったよかった。』

僕は、いくらか分からなかったので、とりあえず千ルピー札を渡した。(約1800円)
すると、
「細かいのはないのか?」
と言われた。

僕が、
「いくら?」
と尋ねると、
「セブン。」
と言って来た。

『700ルピー(約1250円)か、意外と日本の千円カットよりもとるんだな、、』
と思い、700ルピーを出すと、100ルピー札だけとっていった。

『ええ?!
まさかの70ルピー??』

この前スーパーで買った、ちょっとよさげなジュースは、1本100ルピーしたのに、それよりも安いのか、、。

ちなみに、僕が住んでるバンガロールにも1軒、日本人経営の美容室がある。

そこのカット代が確か、2000ルピーだった。
普通の所の約30倍の値段。

日本の一般的な美容室のカット代が、4000円くらいなので、その30倍って言ったら、日本で言ったら10万以上ってことか。
いやはや、日本人ってだけで、すごいプレミア価格だね。

まあそれでも、2000ルピーだと日本円にして約3600円くらいなので、そっちに行きたいなって思っちゃうもんな~。

最近日本では、美容専門学校とかいっぱいあって、美容師が溢れ返ってる。
さらに、近頃は千円カットの質もわりと上がってきて、そんなにおしゃれにする必要なければ、千円カットでも充分って感じになってきた。
さらに、ホットペッパーのクーポンとかで、安くカット出来る美容室もあったりして、過当競争ぎみになって来てる。

おかげで、専門学校を出たばかりの美容師達には、あまりいい仕事がなくなって来てる。
美容師として腕を磨いて独立、なんてことも、かなり優秀な人じゃないともう難しくなって来てるだろう。

『もう、美容師としての道を諦めようかな、、。』
なんて思ってる美容師の方、インドならまだ空いてまっせ~。