インド人は、やたらとクラクションを鳴らす。
日本で車を運転していても、クラクションを鳴らす機会なんてほとんどない。
狭い道ですれ違うときに、待ってくれた相手に対して、「ありがとう」の挨拶代わりに使うことはあっても、それ以外にクラクションを使う機会なんてほとんどない。

が、インドでは、クラクションは日常的に使われる。
多分、4時間くらい運転すれば、100回以上クラクションを鳴らす機会があるのではないだろうか。

『ピッピー、ブーブー、ピロピロピロ、ブッブッブー』
これが、インドの日常的な道路の音だ。

なぜインド人は、こんなにクラクションを鳴らすのだろうか?
理由の一つとしては、インドには信号機がほとんどない、というのが挙げられるだろう。
なので、交差点に差し掛かる前に、『車が来てるぞ』ということをアピールするために、クラクションを鳴らす。
(ただ信号機がないのは、インドに限ったことではない。
日本以外のアジア各国では、よほど大きな道でない限り、ほとんど信号機はない。
が、他の国はここまでクラクションは鳴らしてない)

また、インドでは、車線に対する意識が薄い。
インドには、リキシャと呼ばれる三輪タクシーがよく走っている。
このリキシャは、車幅が軽自動車よりもさらに小さい。

なので、リキシャであれば、二車線の道に3台並ぶことも出来る。
で、その後ろに列を作っていくから、いつの間にか二車線道路に3列の渋滞が出来ていたりする。

さらに、その3列の渋滞の中、追い越しを行うためにガンガン車線変更していく。
なので、そのポジション争いの主張として、クラクションが鳴らされる。

と、まあ他にも細かい理由を挙げようと思えば、いくらでも挙げられそうだが、ざっくりと一言で言ってしまうと、クラクションを鳴らすのがインドの文化なのだろう。

さて、そんなインド。
まあ想像出来るだろうが、交通マナーはめちゃくちゃだ。

僕は、日本の田舎の出身なので、車の運転経験はそれなりにある。
が、インドで車を運転する勇気はあまり湧いて来ない。

恐らく、インドで車を運転するには、日本で車を運転するのの、2倍以上のスキルが必要になる。

聞いた所によると、インドでは、運転免許を取る際の実技試験が、2分くらいで終るらしい。
しかも、試験中にエンストしまくったり、路肩に乗り上げてしまったりしても、問題なく免許が取れてしまうそうだ。
それどころか、裏のルートを使えば、試験自体受けなくても免許取得出来てしまう。

そんな奴らが走ってる道を、運転しなければならないのだ。

さらに聞いた所によると、インドでは多少の接触事故は、目をつぶらなければならないらしい。
警察を呼んでも、賄賂を要求して来て、ますます話がややこしくなるので、基本的に当事者同士の話し合いで終るのだそうだ。
そんな所で、新車なんて持ってても、後悔するだけだろう。

そうそう、賄賂で思い出したが、インドでは交通違反で捕まったとしても、警察に200円くらい払えば許してもらえる。
これはもちろん賄賂だ。

それも、警察の方から堂々と賄賂を要求してくるそうだ。
インドにおいて警官とは、民衆からお金をせびる権利を持った人であって、それ以上でもそれ以下でもないのかもしれない。

ちなみに、こういった賄賂問題は、インドに限った話ではない。
僕が今まで行った、東南アジア各国でも、同じような問題があった。

最近、タイ人の留学生と飲む機会があったが、彼も同じようなことを言っていた。

「タイでは、賄賂を払えば何でも許されてしまう。
でもこれは問題だ。
僕は、こんなことを許してしまう今の政府が嫌いだ。
これは変えていかなければならない問題だ。」

というようなことを語っていた。
確かにこれは、後進国と呼ばれる国ではよくある問題だ。

しかし僕は、こういう話を聞くたびに、少し疑問に思うことがある。
それは、賄賂社会の国は問題があって、日本のように警官が賄賂を要求して来ない国は素晴らしい進んだ国なのか、ということだ。

さっきも書いたが、日本以外のアジア諸国には、信号機がほとんどない。(特に田舎の方では)
逆に言うと、日本は異様なくらいに信号機が多い。

この、信号機の設置に掛かる費用は、1基250~450万近く。
しかも、設置すれば終わりではなく、年間の維持費だけで、各都道府県数億~数10億くらい掛かってるそうだ。
こういったお金を、あらかじめ税金としてとられている。

また、日本は高速道路料金が異常に高い。
タイの高速料金なんて異様に安いし、それに田舎の方に行ったら物凄く立派な国道が通っているので、そもそも高速道路なんて必要とされない。
高速道路でもないのに、皆140キロくらいのスピードでガンガン走ってくからね。

日本の国道で、そんなスピードで走ってて捕まったら、物凄い金額の罰金を払わなければならなくなる。
それが嫌なのであれば、高い高速料金を払うしかない。

このように、日本では予め何らかの形で料金を徴収されている。

後進国では、何かあったとき、目の前の警官に賄賂を払う。
これは、民衆から見て分かりやすいので、民衆からは直接的な不満が出る。

一方の日本は、予め何らかの形で料金を徴収されている。
そのお金はどこに流れていってるのか見えないから、民衆から直接的な不満は出ない。

が、どちらもやってることは、お上が民衆から何らかの形でお金を徴収する、ということであって、どちらもあまり変わらないように思う。

明らかにバレバレのイカサマをされたけど、それを指摘すると、店の奥から怖いお兄さんが出てくるので、渋々払ってる状態と、物凄く巧妙にやってるので、イカサマされてるのに気づかない状態、という感じだろうか。
結局やってることはあまり変わらない。

なので、タイ人の子達が、
「今の社会のやり方を変えたい。」
なんて言ってるのを聞くと、
『それって結局、やり方が巧妙になるだけなんじゃないのかな~。』
なんて風に思ってしまうのだ。

まあ、どんな社会にも問題はあるし、それは話を聞くだけでは、どちらがいいのか中々比較出来ない。
なので、色んな社会を体験してみて、どれがいいのか、自分なりに考えてみよう。