『日本には未だに、侍が道を歩いている。』

外国から見た日本のイメージなんて、そんなもんだ。

『いや、さすがに近代的なビルが建ち並ぶ大都会東京には、もう侍なんかいないかもしれない。

でも、田舎の方だったらまだいるんじゃない?』

そう思ってる人は未だにいる。

しかし、そんな外国人に対して、腹を立ててはいけない。

よく考えてみると、僕たちも、外国に対して未だに偏見を持っていることは多い。

例えば、『インドには未だに、野良牛がその辺を歩いてる。』

なんて話を聞いたことがないだろうか?

一口にインドって言ったって、インドは広い。

そりゃあ、田舎の農村地帯とかに行けば、そこら中牛が歩いてるだろう。

しかし、僕が住んでいるバンガロールは、インドのシリコンバレーと言われるIT都市だ。

インドの原宿と言われるくらい、しゃれた店が並んでいる通りだってある。

そんな都市を、未だに野良牛が歩いてるなんて、そんなことあるわけ、、、、

あるんですよね~、これが。苦笑

そう、インドでは未だに、その辺の道を野良牛が歩き回っている。

(英語学校の先生によると、ちゃんとオーナーはいるらしい。

が、繋がれてるわけではないので、その辺を自由に歩き回っている。)

もちろん、牛だけではない。

地鶏もその辺を歩き回ってるし、野良犬も尋常じゃないくらい多いし、野良山羊だっている。

今日の授業で先生が、

「この街にも小さいけど動物園があるよ。」

と言ってたのを聞いて、かなり笑えた。

『いや、日本人からすると街中動物園なんですけど、、。笑』

まあ、そんな街だから、当然動物の糞がそこら中に散らばっている。

そのせいもあってか、ハエも多い。

市場なんかに行くと、大量のハエに出くわす。

なにか食べようしても、すぐにハエがたかってくる。

以前、タイを旅していたときも、料理にたかる大量のハエに苦しめられた。

必死に振り払おうとする僕を見て、タイ在住歴十年以上の日本人の方は、こう言った。

「こっちでは、ハエとお友達にならなければダメですよ。」

『ハエとお友達?!』

いくら”郷に入れば郷に従え”とは言ったものの、ハエに従える程、僕は柔軟性がない。

しかし、インド人達をみると、確かに彼らは、必要以上にハエを振り払おうとしない。

彼らは本当に、ハエとお友達になっているのだ!

インドでは、そこら中に動物が歩き回っているのを見て分かる通り、動物達に対して非常に寛容だ。

日本人がなくしてしまった、動物達と共存していく、という精神を持っている。

そんな彼らだから、ハエともお友達になれるのだろう。

そうか、僕に足りなかったのは、その精神だったんだ。

”郷に入れば、郷に従え”とは、その地域の習慣を形だけ真似すればいいのではない。

もっと深い、精神からその地域に馴染んでいかなければならなかったんだ。

それを意識し始めると、不思議とハエもあまり気にならなくなって来た。

売られているパンに、多少ハエがたかっていようと、気にせずに買って食べれるようになって来た。

考えてみれば、元々自然は一体なんだ。

土から植物が生え、それを草食動物が食べ、それを肉食動物が食べ、その糞をハエが食べ、また土に戻る。

ハエは僕であり、僕はハエだ。

そう考えると、なんだかハエもありがたい存在にみえてくるではないか。

そんなある日、あるインド料理屋に行った。

僕はいつも通りカレーを注文した。

そして、出て来たカレーを見ると、その中にハエが浮いていた。

『おやおや、こんな所にもインドの共存の精神が。

僕はハエで、ハエは僕。

僕とあなたはお友達。

心身ともに、一体となるため、感謝していただこう。』

 

 

なんて思えるかボケ~!!

取り替えんか~い!

 

と言ってしまった僕は、まだまだ外国人である。