『インドに行く前に、タイ、カンボジア、ベトナムでレベルを上げてから行け。』

これは、アジアを旅する旅人達の間で、よく言われる事だ。

韓国、台湾などの、日本によく似た感じの国であれば、大抵誰でも抵抗なく行く事が出来る。

でも、東南アジアになると、少し雰囲気が違ってくる。

団体ツアーとかしか行った事ない人が、タイ、カンボジア、ベトナムなどを一人旅すると、かなり面食らってしまうだろう。

特に、カンボジアやベトナムなどは、人のウザさのレベルが高い(笑)

日本人旅行者とみると、とにかくふっかけてやろう、という有象無象が集まってくる。

そんな輩達とのやり取りを楽しめるようになって来たら、一人前の旅人だ。

しかし、そんな旅人達も恐れる国がある。

それがインドだ。

『インド人のウザさはレベルが違う(笑)』

これは、インド帰りの旅人達がよく言う言葉だ。

素人が、いきなりインドに行ってしまうと、トラウマになって二度と海外旅行に行きたくなくなってしまうかもしれない。

だから、まずは東南アジアでレベルを上げてから行った方がいい、というのが定説だ。

まずは、ホイミとキアリーくらい覚えておかないと、バブルスライムに毒攻撃されて、速攻全滅しちゃうよ、ってことね。

(ドラクエやった事ある人しか分からない例えだけど、、、)

そんな、旅慣れた旅人も恐れるインドに、遂に出発。

タイのドンムアン空港にやって来た。

(数日前に、ネットでタイのエアアジアのチケットを購入。

1万6千円くらいだった)

出発を待つロビーにいるのは、大半がインド人。

ロビーにバスが迎えに来て、乗客達はバスに乗り込み、飛行機の近くまで運ばれる。

バスが飛行機の側に停車。

乗客降り始めるが、皆順番を守らずに、我先にと押し合いながら降りていく。

『ちゃんと順番守ればいいのに、、』

と思ってしまうのは、まだインドに染まってない日本人だからだろうか。。

シートナンバーを確認して、席に座る。

すると、後ろのインド人同士が、何やら交渉をし始めた。

どうも、友達と席がバラバラだから、あんたの席と友達の席を交換してくれ、と言ってるようだ。

そして、なんなく交渉成立。

かと思ったら、後ろの人だけじゃなく、いろんな人達が勝手に席を移動しまくってる(汗)

僕の横も空席だったのに、その隣の人が友達を呼んだので、インド人が座った。

『少し窮屈、、』

とか思ってたら、関係ない人が、

「あそこ3席空いてるぞ!」

みたいな感じで、席移動を勧めてくる。

『誰だよお前、、、?(苦笑)』

と思いながらも、ありがたく席を移動。

エアアジアは、格安の航空会社なので、機内食はあらかじめ予約をした人だけが食べる。

なので、予約した人の席にだけ、機内食を配っていくわけだけど、こんだけ席移動勝手にされると、FAさん達も大変そう。。(全員、チケットでシート番号を確認しながら配ってた)

大量のインド人を乗せた飛行機は、遂にインドのチェンナイ空港に着陸。

この着陸の時も、国民性が出る。

日本人だったら普通、飛行機が着陸して、滑走路を減速しながら走り、飛行機が完全に止まって、シートベルト外してオッケーってサインが出てから、一斉に外し始める。

でも、インド人達は違う。。

飛行機のタイヤが、地面に着いた瞬間に、一斉に『ガチャガチャガチャ~!!』って音がしだして、全員がシートベルトを外し始める。

『あの~、、地面にタイヤ着いたとはいえ、まだ高速道路走る車よりも速い速度出てるよ、、(250km/h)』

とか思ってしまう。。

まあ、そんなこんなで、インドに無事到着。

エアアジアのタイ人FAさん達と別れるのが、やたらと寂しくなるのはなぜだろう。

インドで一人になって初めて、タイのクオリティと安心感の絶大さに気づく。

『ああ、タイに戻りたい。。』

なんて言ってても始まらないから、さっさと空港出て街へ行かなくては。

まずは両替。

両替屋を見つけるも、レートがどこにも書いてない。

1万円何ルピーか聞いてみると、5600と言われる。

ネットでレート調べたら、5901ルピーだったので、だいぶレート悪いな、と思ってたら、そこからさらに手数料とか言って、5200と言われる。

『10%以上ぼりやがって、、それは高すぎるだろ、、』

と思ったので、1万円を引っ込めて、手持ちの16ドルだけ換えてくれ、と頼む。

すると、720ルピーから手数料を引いて、570ルピーだ、と。

『1600円くらいを換金するのに、300円手数料って、そりゃねえだろう。。しかも、元々の換金レートですらかなりぼってるのに。

もういい、違う所に行こう。』

と思って行こうとすると、

「1万円を5250ルピーでどうだ?」

と言って来た。

「だめだ、レートが悪すぎる。」

「オッケー、じゃあ5300。」

「それだったら、その16ドルだけ換えてくれ。」

(あちらとしてはなんとか大きい金額を換えさせたい。

こちらとしてはレートの悪い空港では出来るだけ大きな金額は換えたくない。)

「分かった、これで最後だ。

1万円5400ルピーでどうだ?」

ここで僕も妥協。

すでに夜9時半くらいで、他にやってる両替屋もなさそうだし、何よりまず、街に行くための電車賃と、今日の宿代をゲットしないといけなかったので、このレートで交換した。

空港の両替屋ですら、レートなしでぼったくろうとしてくるとは、さすがはインド。

いきなり軽いジャブを食らったが、こんなことでめげてたらインドでは生きて行けない。

さっさと街へいく列車に乗ろう。

街へいく列車の駅は、空港から徒歩5分程度の所にある。

駅へ行く途中、薄暗い地下道を通る。

その地下道には、3人の男が。

2人は警官で、1人の男を取り調べしているようだ。

男は、自分のスーツケースを開けさせられ、荷物を確認されている。

身なりはぼろぼろで、みた感じかなり怪しい男だ。

警察は、その男を怒鳴りながら、所持品を出させていた。

麻薬かなにか持ってたんだろうか、、?

そんなことに構ってられないので、横目でみながら駅を探す。

駅のチケット売り場に到着。

「エグモア駅行きはいくら?」

と尋ねると、

「5ルピー。」

だと言われる。

100ルピーを渡すと、85ルピー返って来た。

『あれ?15ルピーの聞き間違いだったのかな、、?

そんな事より電車が着いたみたいだ、早く行こう。』

結局その電車は逃してしまったが、5分くらい待ってると、今度は逆行きの電車がやって来た。

乗り込もうとしているインド人に、

「これはエグモア駅行きですか?」

と尋ねた。

すると後ろから、

「ああ、これはエグモア駅行きだよ。

お前、エグモア駅に行くのか?』

という声が。

振り返ってみると、さっき取り調べを受けてた奴だった。

僕は、瞬間的にそいつを無視した。

”インドで話しかけてくる奴は全員詐欺師だと思え”

これは、旅人達の常識だ。

基本的に向こうから言い寄ってくる奴は、全員疑ってかかった方がいい。

しかもこいつは、ついさっき警察から取り調べを受けてた奴。

さらに、人相からして間違いなく詐欺師感が溢れ出ている。

僕は聞こえない振りをして、そいつを振り払うように早歩きで、少し離れた車両に乗った。

しかし、奴は着いて来た。

そして、わざわざ僕のとなりにぴたっと張り付くように立った。

僕は、話しかけられないように、顔をそらした。

その列車に乗っているのは、皆インド人。

僕一人だけが、見るからに海外からの旅行者だった。

奴からすると、

『今日の獲物一人ゲット~!』

といったところなのだろう。

しかし僕も、東南アジアでレベルアップして来ただけあって、ここまで怪しいとさすがに警戒モードに入る。

奴が荷物の整理をしてる隙をみて、スッと距離を取る。

そして、途中の駅で、奴がよそ見をしてる隙をみて、スッと別の車両に移った。

こうして、なんとか奴を巻く事が出来た。

ほっと一安心。

旅にトラブルは付き物だが、防げるトラブルは出来るだけ防いでおいた方がいい。

あんな奴につきまとわれるだけで、トラブルに合う確立がグン、と上がる。

落ち着いた僕は、ふと電車の切符を見た。

するとそこには、5ルピーと書いてあった。

『クソ~、やっぱあの駅員10ルピー抜いてやがったな~。。』

やはりインド。

用心しても用心しきれない。

40分くらいして、エグモア駅に着いた。

ネットで調べた情報によると、この辺りに安宿街があるらしい。

駅前の通りに出ると、ピカピカとネオンサインを光らせているホテルがあった。

その前には、リキシャと呼ばれる、安いタクシーのようなものの運転手達がひしめき合っていた。

当然、何人もの運転手達がホテルを紹介してやる、と迫ってくるが、基本的には相手にしない。

「自分で探すからいいよ。」

ってな感じで、安ホテルに飛び込んで行く。

しかし、意外と高い。。

1泊1800ルピーとか、、3500円くらいじゃんか。。

インドの留学費は、ひと月5万円くらいで考えてんのに、1泊で3500円なんか取られてたまるか。。ってことで、次の宿を探す。

すると、変なインド人が、

「コンニチハ!」

といって近づいて来た。

僕は、

「はいはい、ありがとう、ありがとう。」

と言って、振り払おうとしたが、頼んでもないのに、どんどんホテルを紹介してくる。

とりあえずホテルに入って、値段を聞いてみると、やはり高い。

違う宿を探そう、と外に出ると、またそいつが勝手に案内しだす。

『ホテルなんか、そこら中にあるんだから、自分で探すよ、、』

と言ってるのに、、、っていうか、実際自分で探して値段聞きに入ってるのに、僕のちょっと前にホテルの入り口に立ち、いかにも俺が紹介したんだ風な顔でこっちを見てくる。

聞いてた通り、このウザさはカンボジアなんかの相手ではない。

カンボジア人のウザさは、僕個人的には心地よい程度のウザさだったので、わりかし好きだったのだが、インド人のウザさはやはり度が越えている(苦笑)

しかし、意外と安い宿が見つからないので、(最安で500ルピー。千円弱)このウザいインド人に頼らざるを得なくなってくる。

そのインド人曰く、350ルピーの宿を紹介してやる、らしい。。

本当はあまり着いて行きたくなかったが、

「とにかく着いてこい!」

と何度もしつこく言われるので、とりあえず着いて行く事に。

(といっても、途中で何度も逃走しかけたけどね、、。

でも、荷物持ってて動き遅いし、その辺うろついてる外国人は自分一人なので、すぐに見つかってしまう。。)

そして、案内された宿。

僕はとりあえず、

「部屋を見せてほしい。」

と言った。

するとそいつは、

「部屋見るのなんて後でいいよ。

疲れてんだからさっさとチェックインして休めよ。」

と言って来た。

僕はそれでも、

「先に部屋が見たい。」

と言った。

すると宿の人が案内してくれた。

案内された部屋は、、まあ汚い。

よく見ると、床を小さなゴキブリが大量に歩き回っている。

ベッドも、何年間掃除してないんだ、、ってくらいに汚い。

昨日、アユタヤの宿で南京虫にやられまくって傷ついた体を休めるには、さすがに厳しいな。。と思ったので、やはり今までの最安値の500ルピーのところにしようと決めた。

その宿を出ると、その男は、

「なんでなんだ?

もうこの時間だとどこの宿も満室で部屋取れねーぞ。」

と言って来た。

そしてさらに、

「もう歩き回って、俺は足が痛いよ。」

と言って来た。

そして、やはり思った通り、こう要求して来た。

「これだけ案内したんだから、チップをくれよ。

20ルピーだ。」

頼んでもないのに、勝手に案内しておきながら、、。怒

もう、疲れてて本当にウザかったので、5ルピーだけ渡してバイバイした。

結局、500ルピーの宿で1泊する事になった。

インドに来て初日から、中々疲れる一日だった。

しかし、インドから帰って来た旅人達が言ってたことが、体感として理解出来て来た。

東南アジアなんかとは、完全にレベルが違うぞインド。。

果たして、くじけることなく無事、インド英語留学を終える事が出来るのだろうか、、、。