「登山初心者だから。」

「普段運動してないから。」

「体力に自信がないから、私には縄文杉は無理。」

 

 

そう思っている方は多いと思います。

往復10時間という長い道のりなので、不安になるのは当然です。

 

今回は、そんな不安を感じている方、そんな不安を感じている方と一緒に行かれる方のためにお届けする情報です。

題して、

「縄文杉トレッキングに参加したいけど、体力に自信がない方へ

満足リタイアプランという選択肢を持っておこう」

です。

 

まず、僕のガイドとしてのポリシーを明確にしておきます。

僕のガイドとしてのポリシーは、

「目的地に辿り着かせることが目的ではなく、満足させることが目的」

です。

 

ここで、以前ご参加されたお客様の事例を紹介します。

60代の女性2名のお客様で、1名の方がウィルソン株のあたりで脚がつりそうになってしまいました。

ウィルソン株は、平坦なトロッコ道を3時間歩き、山道に入って30分のところにあります。

 

ウィルソン株から縄文杉までは通常1時間半。

しかし、歩き方をみている限り、このお客様では確実に2時間以上は掛かりそうな状態でした。

 

それもまだ問題が起きていない状態での話。

この後、本当に脚がつったり、膝を痛めたりすれば、もっと時間が掛かり、帰りのバスに乗り遅れてしまいます。

 

そこで提案したのが、ニセ縄文杉に抱きついて、普段時間がなくて中々行けないような河原でティータイムをとって、ゆっくりと帰るというプランです。

ウィルソン株から15分、普通は行かないコースを歩けば、立派な屋久杉に触れられるところがあります。

もちろん、縄文杉と並んで比べれば、歯が立たない程度の大きさですが、初めて屋久杉を見る方にとっては、十分立派な樹です。

 

しかも、縄文杉はデッキから20m程離れていますが、こちらのニセ縄文杉は抱きついて写真を撮ることが出来ます。

さらに、そのニセ縄文杉のすぐそばには、子供だったら絶対に秘密基地を作っちゃいそうな面白い切り株もあります。

このプランを提案させて頂いたところ、お客様は快諾。

結果的に、ものすごく大満足され、

「無理して縄文杉に行くよりも、よっぽど楽しかった!」

と仰られていました。

 

ここで重要なのが、今回のお客様の目的が、

「縄文杉を観ること」

ではなく、

「屋久島の森を楽しむこと」

だったことです。

 

中には、

「死ぬまでに人生で一度は絶対に縄文杉を観ておきたい」

という方もいるので、その場合は多少無理をしてでも、励ましながら縄文杉までご案内いたします。

(これ以上は身体的に危険だと判断したら、どれだけ行きたい気持ちがあっても引き返す判断をします)

 

しかし一方で、手段が目的化してしまっている方が意外に多いのも事実です。

本来は、

「忙しい日々のストレスを解消するために屋久島に旅行に行きたい」

「屋久島に行くんだったら有名な縄文杉を観てみたい」

と、縄文杉を観ることは、忙しい日々のストレスを解消するための手段だったはずなのに、縄文杉を観るために忙しく歩き続け、ストレスになっている、というのはよくある話です。

 

こうなってしまわないように提案したいのが、

『満足リタイアプラン』

です。

 

縄文杉に辿り着けなかったとしても、満足出来るようにリタイアする。

ただし、ここでまた問題になることがあります。

 

それが、

①誰もリタイアの言い出しっぺになりたがらない

②縄文杉に辿り着けずに満足する手段を知らない

という問題です。

 

まず、

①誰もリタイアの言い出しっぺになりたがらない

という問題について。

 

リタイアを検討しているグループ内には、歩ける人と歩けない人がいます。

歩けない人の中には、

「私がリタイアしようと言ったせいで、一生に一度の縄文杉を観るチャンスを、あなたのせいで失った、と一生思われ続けるのではないか。」

という心理が働きます。

 

一方で歩ける人の中には、

「私がリタイアを勧めると、この人のプライドを傷つけるんじゃないか。」

という心理が働きます。

 

ちなみに、歩ける人でも、歩けない人と同じペースで歩くのは、実はすごく疲れることなのです。

誰でも、自分のペースで歩くのが一番疲れません。

 

自分のペースよりも速く歩くのが疲れることは想像しやすいですが、実は自分のペースよりもゆっくり歩くのも、結構疲れることなのです。

なので、歩ける人の心の中には、

「自分のペースで歩くなら縄文杉まで余裕だけど、この遅いペースで歩くとしたら、最後はヘロヘロになるんじゃないか。」

という心理も働いています。

 

この場合、グループ内の皆が実はリタイアしたいと思っているにもかかわらず、誰も言い出せず、皆が

「誰かリタイアするって言えよ、、、」

と思いながら登り続ける、ということになってしまいます。

 

こうなってしまう原因として、

②縄文杉に辿り着けずに満足する手段を知らない

という問題があります。

 

縄文杉に辿り着けずに満足する手段を知らなければ、

縄文杉に辿り着く=100

縄文杉に辿り着けない=0

という二元論に陥ってしまいがちです。

 

ここに、縄文杉に辿り着けなくても満足するプランがある、ということさえ知っていれば、望まない頑張りというのは避けることができます。

 

もう一度言っておきますが、

「死ぬまでに人生で一度は絶対に縄文杉を観ておきたい!」

という強い思いがある方であれば、多少の無理をしてでも辿り着けるよう全力でサポート致します。

 

ただその前に、自分が縄文杉を観る目的はなんだったのかを今一度考えてみてください。

そして、グループ全員に、「満足リタイアプラン」という選択肢があることを伝えておいてください。

 

選択肢があるだけで、柔軟な対応が出来ますので。

楽しい屋久島の旅を応援しております。