ムンバイ4日目、最終日。
今日は、19時55分の夜行列車に乗り、ニューデリーへと向かう日だ。
それまでの時間、Mさんの妹さん(3日目とはまた別の)の家に遊びに行った。

ところで、ヒンドゥー教には、玄関先にランゴリと呼ばれる砂絵を描く風習がある。
花模様や、幾何学的な模様を、米粉や小麦粉等(最近は着色した岩粉を使うことが多いらしい)を使って描く。
ランゴリを、家の前に描くことによって、家に幸福を招き入れる、という意味があるのだそうだ。

で、僕とMさんが、Mさんの妹家族の住む家に遊びに行くと、その玄関先に、僕の名前と、漢字で書かれた”歓迎”という文字が、ランゴリで描かれていた。
ちなみに、Mさんの妹さん家族は、全く日本語は出来ない。

なので、”歓迎”という漢字も恐らく、辞書かなにかで調べて、一生懸命真似して描いたのだろう。
”雚欠迎”みたいな感じになってて、ちょっとバランスとれてない所なんかを見ただけで、
『一生懸命歓迎しようと思って描いたんだなあ。。』
という気持ちが伝わって来る。

ちなみに、Mさんや、Mさんの妹さんが住んでいる地域は、ムンバイと言っても、昔から住んでいる人が多い下町的な所らしい。
なので性格的にも、都会人というよりは、地方人っぽい気質の人が多い。

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②ろ

そんな地域に、外国人が遊びに来るということは、かなり珍しいことのようだ。
Mさんの妹さんも、
「今、外国人がうちに遊びに来ている。」
と友人に言ったら、
「信じられない!」
という反応をされたそうだ。

Mさんの妹さんの家に入ると、妹さんと、その娘さんが迎えてくれた。
娘さんは、もうすぐ医学部を卒業して医者になるのだそうだ。

まさに才色兼備という言葉がぴったりの、きれいな人だった。
(ちなみに、Mさんの家系は、ほぼ全員美形揃いだった。
っていうか、インドは基本的に美形が多い。)

娘さんは、Mさんと、Mさんの妹さんが昼食の準備をしてくれてる間、僕が一人で退屈しないように、色々と話してくれたり、質問してくれたり、気を使ってくれてるのが伝わって来た。
Mさんの息子さんもそうだったが、まだ20代前半なのに、結構こういった細かい気遣いをしてくれるところはスゴイと思う。

昼食の準備が出来、Mさんの妹さんの手料理をごちそうになった。
Mさんの妹さんもまたベジタリアンで、あまり刺激の少ない、優しい味の料理だった。

中でも最後に食べた、リゾットっぽい料理は、本当に美味しかった。
ほとんど食べ終わった後に出て来たので、
「ほんとに少しだけでいいです。」
と言ったくせに、美味しかったのでおかわりしてしまったくらいだ。

昼食後、お茶を一杯頂いて一休みした後、僕とMさんとMさんの妹さんの3人で、近所のお寺に出掛けた。
インドでは珍しい、日本のお坊さんが建てた、日本の仏教寺だ。

そのお寺で、日本人の住職と話をし、僕らは次に、海岸近くの公園へ行った。
公園を散歩していると、ブレイクダンスをやっているインド人の青少年達がいたので、僕も混ぜてもらい、30分くらい一緒に練習をした。

「もうそろそろ時間が、、。」
とMさんに言われたので、僕はインド人のB-BOY達に別れの握手をして、その場を離れた。

その公園から、Mさんの妹さんの家までは、歩いて15分程。
僕たち3人は、歩いて帰ることにした。

歩き始めるとすぐ、また別の大きな公園を見つけた。
その公園のグラウンドで、ジムナスティック(器械体操)をしている少年少女達がたくさんいた。

『さすがインド。
ジムナスティックを、ジムでなくグラウンドでやるのか!?』

僕は、ジムナスティックも結構好きなので、感心しながら横目で見ていた。
するとバッタリ、Mさんの妹さんの知人に出くわした。

しかも、その知人の女性は、そのグラウンドでやっているジムナスティックの先生だった。

「せっかくなので、ちょっと見て行きますか?」
とMさんが言ってくれたので、僕はお言葉に甘えて、練習を見学させてもらうことにした。

少年達がジムナスティックの練習をしているグラウンドの脇に、室内練習場があった。
僕たちは、その中の事務室のような所に案内され、そこの会長さんのようなおじいさんを紹介された。

そのおじいさんは、インドの伝統的な踊り『マラカンブ』を教えている先生だった。
『マラカンブ』とは、簡単に言うとポールダンスのようなものだ。
ポールダンスのポールよりも、少し太めの木の棒を使い、曲芸のような動きをする。

ちょうど今、その室内練習場で、ナショナルレベルの少年達が練習している、ということだったので、特別に披露してくれることになった。
初めて、『マラカンブ』を見せてもらったが、僕がやっていたブレイクダンスと通じる動きがたくさんあり、僕は興奮した。

「ちょっとやってみるか?」
と言われたので、一番簡単な、2mちょっとある木の棒のてっぺんに登り、座るという動きをやってみたが、中々難しかった(というか高いので怖い)。

そんなことをしている間に、時計はもう19時を回ってしまっていた。
デリー行きの夜行列車の出発時間は、19時55分。

その公園から、Mさんの妹の家まで、歩いて15分程。
Mさんの妹さんの家から、列車の駅まで20分弱。

さらに、身体を動かして汗をかいたので、シャワーを浴びることも考えると、かなりギリギリの時間になってしまった。(これから27時間、列車に乗ることになるので、今シャワー浴びとかないとかなりまずい)

僕たち3人は、かなり急ぎ足で歩き始めた。
すると、5分程歩いた所で、またMさんの妹さんの知人に出くわした。

僕より少し年齢が上くらいの女性だった。
買い物かなにかの帰りなのか、彼女はスクーターに乗っていた。

すると、Mさんの妹さんが、
「あなたは彼女の後ろに乗せてもらって、先に帰ってシャワー浴びてなさい。」
と言って来た。

見知らぬ女性のバイクの後ろに乗るなんて、日本人としてはちょっと抵抗がある。
が、僕はもう半分インド人だ。

僕は遠慮なく、その女性のバイクに乗せてもらった。
Mさんの妹さんの団地に着いたものの、Mさんの妹さんの家が、どの棟の何号室だったか、分からなくなってしまった。

その女性も、どの棟の何号室かまでは分からないようだった。
そうこうしていると、Mさんの妹さんの娘さんが降りて来て、
「シャワー浴びないといけないんでしょ?
さあ早く上がって。」
と言って、家に案内してくれた。

家に入ると、Mさんの妹さんの旦那さんも待っていた。
旦那さんは、
「俺がバイクで駅まで送って行ってやるから安心しな。
さあ早くシャワーを浴びて。」
と言ってくれた。

妹さんが、何もかも電話で伝えてくれてたみたいだ。
すごい連係プレイ。

僕がシャワーを浴び終えると、MさんとMさんの妹さんも帰って来ていた。
そして、僕が気に入っていたリゾットっぽい料理を、弁当箱に詰めて、
「晩ご飯に食べて。」
と言って渡してくれた。

本当に何から何まで、、ありがたすぎる。。

Mさんとはここでお別れ。
僕は、Mさんの妹さんの旦那さんのバイクの後ろに乗り、デリー行きの列車が来る駅へと向かった。

本当は、『ウルルン滞在記』のような、感動の別れの挨拶でもしたかったが、バタバタしすぎて、ろくに挨拶も出来ずに別れてしまった。
まあ、最近はありがたいことなのか、残念なことなのか、別れたその日に、またネット上で再会出来てしまうので、感動の別れの意味も薄れて来てるんだけどね。。

そんなこんなで、僕はムンバイを後にした。
ムンバイで過ごした4日間が、僕がインドで過ごした約4か月間の中で、最も楽しく、最も心安らかな時間になった。

□インド生活を振り返って

『インド好きが、他人にオススメしたくない国、それがインド』
『インドを訪れた旅人は2つに分かれる。インドが大好きになるか、インドが大嫌いになるか、のどちらかだ』

この2つの言葉は、インドという国を、非常に的確に表現していると思う。

では一体なぜ、インドを訪れた人は、大好きになるか、大嫌いになるか、2つに分かれてしまうのだろう?

僕が思うに、インド人は、とんでもなくいい奴らばっかりなんじゃないだろうか?
お人よしというレベルの、いい奴らばかりだ。

が、お人よしが故に、彼らは騙されやすいのではないだろうかと思う。
騙そうと思えば、簡単に騙せてしまう。

それに気づいた一部の人達が、人を騙すようになってしまった。
そしてインド人達は、騙されないよう、心を武装するようになってしまった。

インドを訪れた旅人達が、最初に接するのは、人を騙そうと待ち構えている魑魅魍魎達か、自分が騙されないように心を武装したインド人達。

心を武装したインド人達は、その優しさを中々みせてくれない。
そして、優しい言葉をかけて近づいて来る奴らは、人を騙そうとしている悪人達だ。

そんな人達にしか触れてなければ、大抵の人はインドが嫌になってしまう。
『もう二度とインドには行きたくない。』
そう思ってしまうだろう。

では、
『インドが大好きだ。
ぜひもう一度行きたい!』
そう言う人達は、なぜそう思うようになったのか?

彼らは恐らく出会ったのだろう。
心の武装を解いたインド人達に。

インド人達の多くは、根っからのお人よしだ。
しかし、その姿を、魑魅魍魎達がうごめく厳しいインド社会でみせてしまうと、自分が傷つけられてしまう。

だから彼らは普段、心を武装している。
しかし、それはもちろん本意ではない。

彼らは本当は、人に対して優しくしたいのだ。
それが彼らの、自然な姿なのだ。

だから、心を許した相手には、とことん優しく接する。
その優しさに触れた旅人が、インドを大好きになってしまうのではないだろうか。

僕は、今年の5月にインドに来て以来、インドの文句や不満を書きまくって来た。
一時は、インドを嫌いになったこともある。

が、今はそういったことも全部ひっくるめて、インドが好きになった。
なぜなら、インド人達の優しさに触れてしまったからだ。

インドに来た当初は、インドを好きになる人の気持ちが、全く理解出来なかった。
が、今なら理解出来る。

『こりゃあ、ハマる人はハマるわ。』

うん、でもオススメはしないけどね。笑